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・2025/9/26 
第5回 小児科医がよく処方するかぜ薬

暑さが和らぎ、朝は肌寒さを感じるようになってきました。
10月からインフルエンザの予防接種を開始しますが、これから寒くなると色々な風邪が流行ると思われます。

子どもたちのかぜの症状には、のどの痛み、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳などがあります。
これらの症状があると、遊べなくなってしまったり、夜中に起きてしまったり、食事が進まなかったりすることがあると思います。
つらい症状は早く楽にしてあげたいですね。

風邪を引いた時に、子どもたちに必要な薬は何でしょうか。
かぜ症状を和らげるための薬には、いくつか種類があります。
薬の適切な使用により症状の改善が期待できる一方で、処方の仕方によっては必ずしも症状が和らぐわけではありません。
薬の効果を期待して、一度に色々な種類の薬を飲めば、そのうちのどれかが効果を発揮し、症状が軽快することもあります。
しかし、そのうちいくつかの薬は効果がなかったり、むしろ症状を悪化させたり、副作用を引き起こしたりする可能性もあります。

今回は、“のど・鼻の風邪”のときによく出される薬のメリット・デメリットについて、代表的な薬を例に挙げて説明します。()内は商品名。

・カルボシステイン(ムコダイン)、アンブロキソール(ムコソルバン) 
メリット:鼻水や痰の粘調性(ねばねば)がゆるくなり、鼻づまりがよくなることが期待されます。
デメリット:鼻水が奥に垂れ込むと咳の回数が増える可能性があります。

・ツルブテロールテープ(ホクナリンテープ)、プロカテロール(メプチン) 
メリット:気管支喘息の薬であり、その体質があるお子さんは、咳の回数が減ることが期待されます。
デメリット:テープは皮膚がかぶれたり、飲み薬は量が多いと手が震えたりすることがあります。

・デキストロメトルファン(メジコン)、チペピジンヒベンズ(アスベリン) 
メリット:のどの腫れ、気管支炎や喘息など咳の原因がはっきりしない場合、咳の回数が減ることが期待されます。
デメリット:かぜの引き初めに内服すると、かぜ症状が長引かせる可能性があります。

・レボセチリジン(ザイザル)、オロパタジン(アレロック) 
メリット:アレルギー性鼻炎の薬であり、その体質のあるお子さんでは、鼻水の量が減ることが期待されます。
デメリット:鼻水の粘調性(ねばねば)がまして、鼻づまりを起こす可能性があります。

・モンテルカスト(キプレス)、プランルカスト(オノン) 
メリット:気管支喘息やアレルギー性鼻炎の薬であり、その体質があるお子さんは、咳の回数が減る可能性があります。
デメリット:まれに下痢になる可能性があります。

当院では、子どもたち一人一人の状態を把握して、この薬は有益か、副作用の懸念が大きいのかを考え、症状の経過や既往歴から薬を選択しております。
子どもたちに安全な医療を提供できるよう、できる限り丁寧な説明を心掛けていますが、薬についてわからないことや疑問に思うことがあれば、遠慮なくお尋ねください。

・2025/8/19 
第4回 休みの日に寝すぎると体調不良につながる?!

こんにちは。8月も後半ですが、まだまだ暑い日が続きますね。
クリニックは夏季休暇が終わり、今週からまた通常診療をしています!

お子さんたちはどうお過ごしでしょうか。

今回は睡眠と健康のお話です。
慢性的な睡眠不足は、肥満、心筋梗塞、精神疾患に関連することがわかってきており、睡眠の重要性が注目されています。
しかし、私たち日本人は世界の中で最も睡眠時間の短い国民だと言われています。

     日本人   世界での推奨
小学生  8-9時間  9-11時間
中学生  7-8時間  8-10時間
おとな  6-7時間  7-9時間

日本人の睡眠時間は子どもも大人も全世代で短く、慢性的な睡眠不足であると言われていますが、
中学生、高校生の睡眠では、「社会的時差ぼけ」も注目されています。

社会的時差ぼけとは、社会的制約のある平日と制約のない休日の就寝時刻・起床時刻がズレていることを言います。

中学生、高校生を対象とした調査で、平日と休日の就寝時刻と起床時刻を比べたときに、就寝時刻は変わらないものの休日の起床時刻が遅くなり、睡眠時間が長くなることがわかっています。これは学年が上がるほど顕著になっており、平日の睡眠不足を休日に補っていることが考えられています。※参考1

この社会的時差ぼけが健康に悪影響を与えていることが報告されており、平日と休日の起床時刻に1時間以上のずれがある子どもは、ズレがない子どもに比べて、気分のむら、日中の眠気、だるさが多いことがわかっています。※参考2、3

夏休みにズレてしまった睡眠リズムを戻すことは、はじめは大変かもしれませんが、新学期に向けて起床時刻を平日と同じにしておくと、自然に生活リズムが戻り、体調が整ってくることが期待できます。

お子さまの健康のために、お子さまの睡眠習慣について見直してみてください!

「起床時刻を一定にする」ことを意識すると、体調不良の改善につながると考えられる一方で、
ヒトの覚醒を促すオレキシンが足りないナルコレプシー(過眠症)という病気や、
成長期に伴う自律神経の失調をきたす起立性調節障害という病気で、朝起きるのがとても困難なお子さんがいます。
お困りのことがあればかかりつけの小児科にご相談ください。

※参考1  「子どもの睡眠健診」プロジェクト・中間報告2024

※参考2 Tamura N, et al. Social jetlag among Japanese adolescents: Association with irritable mood, daytime sleepiness, fatigue, and poor academic performance. Chronobiol Int 2022;39:311-322

※参考3 斎藤雄弥, 他: コロナウイルス感染症2019に伴う長期休校がもたらした中学生への影響. 日本小児科学会雑誌. 2021;125:949-956.

・2025/8/18 
第3回 “ふつうのかぜ”の正体

かぜとは、のどの痛み、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳などの症状を伴う状態をいいます。

かぜの原因のほとんどはウイルスによる感染症です。人に感染するウイルスは400種類以上あるといわれています。

かぜの原因ウイルスとして、インフルエンザウイルスやコロナウイルス、RSウイルスは簡単に検査ができるため有名ですが、簡単に検査できないウイルスもたくさんあります。しかし、2020年の新型コロナウイルスの流行に伴い、大きな総合病院ではPCR検査ができるようになり、今まで判定することができなかったウイルスがいくつかわかるようになりました。

以前、私が勤めていた病院で行った調査では、肺炎・気管支炎の原因となったウイルスは、第1位ライノウイルス、第2位パラインフルエンザウイルスでした。※参考1

ライノウイルスは、風邪の代表的な原因ウイルスです。症状は、鼻水・鼻づまりが強く、痰が絡まった咳を認めます。肺炎・気管支炎だけでなく、喘息発作を引き起こすことがあります。また、2歳未満のお子さんでは中耳炎の合併にも注意が必要です。

パラインフルエンザウイルスは、名前がインフルエンザウイルスに似ていますが、全く異なるウイルスです。鼻汁や鼻づまりの症状は少ないものの咳の症状が強く、幼児のお子さんではクループ症候群という夜間の咳発作を引き起こすことがあります。肺炎・気管支炎になり、重症化することがあります。

たくさんの子どもたちがかかるライノウイルスやパラインフルエンザウイルスですが、多くのクリニックでは簡単に検査することはできず、東京都の調査でも流行状況を知ることはできません。※参考2

しかし、年齢や季節、問診から得られる症状などから、病原体をある程度予想することは可能です。
小児科医が「ふつうのかぜですね」と言う場合も、おそらくこのウイルスだからこういうリスクがあるな、などと考えながら診療を行っています。

診療を通して肺炎・気管支炎、喘息、中耳炎の合併症がないかを確認しながら、かぜを安全に乗り越えてほしいと思っています。お子さまに心配な症状があるときは、かかりつけの小児科への受診をご検討ください。

※参考1 Yo Murata, Yuya Saito, et al. Impact of respiratory viral infections on pediatric inpatients with a respiratory disease after COVID-19 restrictions. Pediatr Int. 2025. doi: 10.1111/ped.70138.

※参考2  東京都感染症センターの週報

・2025/8/4 
第2回 夏風邪ってなに?

医師が「夏風邪」と呼んでいるものについて少し説明しようと思います。
夏風邪とは、エンテロウイルス属に含まれるさまざまなウイルスによる感染症のことです。

エンテロウイルス属には、
 ・エンテロウイルス
 ・コクサッキーウイルス
 ・エコーウイルス などがありますが、
これらのウイルスをお聞きになったことのない方が多いと思います…。

喉に小さいぶつぶつが認められた時、ヘルパンギーナという病名を告げられたり、手や足にぶつぶつを認められた時、手足口病という病名を告げられたりしますが、両方ともエンテロウイルス属を原因とする感染症です。

ヘルパンギ-ナは、夕方の高熱が3-7日程度続き、喉の痛みを伴うことがあります。喉の痛みで食事がしにくくなることがあるので、食べやすいもの・飲みやすいもので糖分と水分をこまめにとりましょう。

手足口病は、多くの場合、発熱は2日程度、皮膚の症状は4日程度、広がっていきますが、1週間程度で消えていきます。まれに数か月後に出たり消えたりすることがあります。

エンテロウイルスは唾液や糞便から感染するため、感染予防のためにはお子様のケアをした後の手洗いが大切です。

1つ注意点として、夏風邪と症状がよく似ている溶連菌感染症があります。38度以上の発熱、3歳以上、咳がない場合には溶連菌感染症が疑われます!夏風邪はウイルス感染症であり、抗生剤は効果がありませんが、溶連菌は細菌であるため抗生剤治療が有効であり、抗生剤でしっかり除菌する必要があります。症状だけでは夏風邪と区別がつきにくく、検査が必要になります。

溶連菌感染症は夏休みになると急激に減少しますが、高熱を認めた際には是非、受診をご検討ください!

・2025/8/3 
第1回 開院して半年が経ちました

ひだまりの森こどもクリニック 院長の斎藤雄弥です。

2025年1月に開院して、6か月がたちました。
この半年で多くの方々にご利用いただき、たくさんの子どもたちと出会うことができました。
これまで私はこども病院や地域の中核病院で長く勤務しており、かかりつけの先生から紹介を受けた子どもたちの診療をしていました。今は子どもたちにより近い存在として、子どもたちの小さな変化やご家族が気になっていることを診たり聞いたりすることにやりがいを感じながら診療しています。

開業した1月から3月までは春花粉の影響と考えられる症状(鼻水、鼻づまり、咳)のご相談をたくさんいただきました。今年のスギ花粉は猛威を振るっていましたね。
春休みが終わった4月からは、保育園や学校が始まり、鼻かぜウイルスや溶連菌、胃腸炎などのさまざまな感染症が増えました。

今、小学生は夏休みに入り感染症は減ったと思いますが、保育園に通われているお子さんたちの間で夏風邪や胃腸炎が流行っているようです。夏風邪については次回、詳しくお話ししたいと思います。

こちらのブログでは、“ひだまりの森こどもクリニック”が考える「子どもたちの健康に関わる情報」や、医療者である私たちの「子どもたちへの思い」を定期的に発信していこうと思います。
興味のある内容があれば、ぜひ参考になさってください!!

042-843-6385
住所
〒207-0011
東京都東大和市清原1丁目1213-7
東大和リビングテラス内
診療内容
小児科
駐車場
東大和リビングテラスの駐車場が利用可能(無料)
最寄りバス停
  • 「団地南」から徒歩4分
駅からのバス停までのアクセス
  • 西武拝島線「東大和駅」から「団地南」までバスで10分
  • 西武新宿線「久米川駅」から「団地南」までバスで16分
診療時間 日・祝
09:00 ~ 12:00
一般外来
13:30 ~ 15:00
予防接種
乳幼児健診
健診 予防 予防 健診
15:00 ~ 18:00
一般外来
火曜午前、土曜午前 ◎9:00~13:00
休診日 火曜午後、土曜午後、日曜、祝日