小児の感染症
小児で流行しやすい感染症について
溶連菌(溶血性連鎖球菌感染症)
A群β溶血性連鎖球菌による咽頭炎(発熱、のどの痛み)や猩紅熱(しょうこうねつ:発熱、ざらざらとした皮疹)が発症することがあります。冬や春から夏にかけて流行し、特に4歳から15歳の子どもがかかりやすいです。
(症状の経過)
体温は38度以上で1日中持続することが多く、咳や鼻水の症状は通常見られません。
診察では、扁桃腺の腫れや白苔(はくたい)、頸部リンパ節の腫れが確認されます。また、溶連菌の抗原検査を行い、感染の有無を調べます。
(対応方法)
抗生剤を使用すると、症状は速やかに改善します。リウマチ熱(発熱、関節痛、発疹、心臓炎などの症状)の予防のため、抗生剤は10日間しっかりと服用する必要があります。まれに、溶連菌感染後に糸球体腎炎が発症することがあり、1か月後に頭痛や顔のむくみ、尿が出にくいなどの症状があれば、すぐに受診してください。
学校保健安全法により、症状が改善してから24時間は出席停止となります。
咽頭結膜炎(プール熱)
アデノウイルスによる感染症は、発熱、咽頭炎(のどの痛み)、結膜炎(目が赤くなる)などの症状を引き起こします。主に夏に流行し、幼児や学童に多く見られます。
(症状の経過)
発熱は午前中よりも夕方にかけて上昇し、5日ほど続くことがあります。
診察では、扁桃腺の腫れや白い苔(はくたい)、頸部リンパ節の腫れ、眼球結膜の充血、眼脂(めやに)を確認します。必要に応じてアデノウイルスの抗原検査を行います。
(対応方法)
少量でもこまめに糖分を含んだ水分を摂取し、解熱薬を使いながら十分な休養を取ることが大切です。結膜炎の症状には、ステロイドや抗生剤の点眼薬を使用することがあります。
学校保健安全法により、症状が改善してから48時間は出席停止となります。
マイコプラズマ
マイコプラズマは細胞内寄生菌に分類され、一般的な細菌に比べて肺や気管支への直接的な傷害は弱いとされています。一方で小学生・中学生・高校生では強い炎症反応を引き起こし、発熱、関節痛などさまざまな症状を呈することがあります。
(症状の経過)
主な症状は、乾いた咳(鼻水は伴わない)、発熱、のどの痛みです。通常10-14日ほどで自然に改善します。呼吸が苦しくない場合や、診察で明確な異常が見つからない場合でも、レントゲン検査で肺炎が確認されることがあります。
(対応方法)
マイコプラズマに対する抗菌薬を内服することで、通常2〜3日後に症状は改善しますが、咳が長引くこともあります。抗菌薬が効かない場合は、自然に症状が軽くなるのを待つか、ステロイドを使用することもあります。少量でもこまめに糖分を含む水分を摂取し、解熱薬を使いながらしっかりと休養を取ってください。
学校保健安全法により、発熱などの急性期の間は出席停止となります。
ヘルパンギーナ
エンテロウイルス属のコクサッキーウイルスにより、咽頭炎やアフタ性口内炎が発症します。主に夏から秋にかけて流行し、特に乳幼児に多く見られる感染症です。
(症状の経過)
診察では、咽頭に発赤や水疱が見られることが特徴です。発熱は午前中より夕方にかけて上昇し、5日ほど続くことがあります。また、けいれん発作や下痢を伴うこともあります。
(対応方法)
少量でもこまめに糖分を含む水分を摂取し、解熱薬を使いながら十分に休養を取ることが大切です。
学校保健安全法により、発熱や喉頭・口腔に水疱や潰瘍がある間は出席停止となります。
手足口病
エンテロウイルス属のコクサッキーウイルスやエンテロウイルスによって、咽頭炎やアフタ性口内炎が引き起こされます。夏から秋にかけて流行し、特に乳幼児に見られる感染症です。発熱や皮疹が特徴で、咽頭からは1〜2週間、糞便からは2〜4週間ウイルスが排泄されるため、感染の広がりには注意が必要です。
(症状の経過)
診察では、咽頭や手のひら、手の甲、足の裏、足の甲、膝などに水疱が見られることが特徴です。水疱は1週間程度で痕を残すことなく治ります。また、けいれん発作や下痢を伴うこともあります。
(対応方法)
少量でもこまめに糖分を含む水分を摂取し、解熱薬を使いながら十分に休養を取ることが大切です。
学校保健安全法により、発熱や喉頭・口腔の水疱・潰瘍がある間は出席停止となります。
RSウイルス感染症
RSウイルスは、上気道炎、気管支炎、細気管支炎、肺炎などを引き起こします。夏から冬にかけて流行し、特に乳幼児に多く見られる感染症です。2歳までにほぼ全ての子どもが初感染するとされています。
(症状の経過)
症状は咳や鼻水から始まり、2日目以降に発熱することが多く、通常10日ほどで回復します。鼻水や痰による鼻づまりや呼吸困難を伴うことがあり、聴診で喘鳴(ぜんめい)が確認されることがあります。必要に応じてRSウイルスの抗原検査を行います。
(対応方法)
少量でもこまめに糖分を含む水分を摂取し、解熱薬を使用しながらしっかりと休養を取ることが重要です。呼吸が苦しくなった場合には、入院して酸素投与が必要になることがあります。
学校保健安全法に基づく出席停止の規定はありませんが、各保育園や幼稚園の指示に従ってください。
インフルエンザ感染症
インフルエンザウイルスは、上気道炎、気管支炎、肺炎を引き起こします。冬から春にかけて流行し、全年齢で感染が見られます。
(症状の経過)
主な症状は発熱、咳、関節痛、筋肉痛です。診察では、咽頭の発赤やリンパ濾胞が見られることがあります。けいれん発作や下痢を伴うこともあり、必要に応じてインフルエンザウイルスの抗原検査を行います。
(対応方法)
少量でもこまめに糖分を含む水分を摂取し、解熱薬を使いながらしっかりと休養を取ることが大切です。タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害薬を、発症から48時間以内に使用すると、症状が早く軽快することがあります。まれに幻覚などの副作用が起こる可能性があることをご理解のうえで使用できます。
学校保健安全法では、発症後5日間経過し、かつ解熱後2日間(乳幼児の場合は3日間)を経過するまで出席停止となります。
突発性発疹
突発性発疹は、ヒトヘルペスウイルス6型が原因で起こり、3日間の高熱の後、全身に広がる赤い発疹が出る感染症です。保護者や小児に慣れていない医療者でも心配になるほどの高熱を伴うことが多いです。2歳までに99%の子どもが感染すると言われていますが、生涯に一度しかかかりません(まれに、ヒトヘルペスウイルス7型でも似たような症状が出ることがあります)。なお、予防接種はありません。
(症状の経過)
突発性発疹では、高熱以外に特に目立った異常が見られないことが特徴です。発熱は3日間続き、その後、胸やお腹から顔、手足にかけて赤い発疹が広がります。発疹は通常、2日以内に自然に消えていきます。また、この病気では子どもが不機嫌になることが多く、けいれんや下痢が見られることもあります。
(対応方法)
少量でも構わないので、こまめに糖分を含んだ水分を摂取させ、解熱剤を使用しながらしっかりと休養を取らせることが大切です。
突発性発疹は、学校保健安全法による出席停止の対象ではありませんが、各保育園や幼稚園の指示に従うようにしましょう。
水痘(みずぼうそう)
水痘は、水痘帯状疱疹ウイルスが原因で、2~3日間の発熱と全身に水疱ができる感染症です。特に冬から春にかけて流行し、幼児や学童に多く見られます。生涯に1度しかかからない病気ですが、水痘ワクチン(定期予防接種)によって予防することができます。また、水痘ワクチンを接種することで、たとえ感染しても症状が軽く済みます。さらに、将来の帯状疱疹のリスクも軽減できるとされています。
(症状の経過)
発熱や喉の痛み、食欲不振が現れてからおよそ1日後に、皮疹が体から手足、さらには頭髪の中にも広がるのが特徴です。皮疹は約1週間かけて、「紅斑(赤い斑点)→丘疹(盛り上がった発疹)→水疱→膿疱→痂疲(かさぶた)」と段階的に変化します。
(対応方法)
簡易にできる検査はありません。
簡単にできる検査はありませんが、治療は主に症状を和らげることが中心となります。少量でもよいのでこまめに糖分を含んだ水分を摂取し、解熱剤を使って休養を取ることが大切です。予防接種を受けている、または免疫に異常がないお子さんには、通常、抗ウイルス薬は必要ありません。ただし、抗ウイルス薬が必要な場合や大人の場合は、発症から72時間以内に治療を開始すると症状が軽減します。かゆみ止めとして塗り薬を処方することもあります。
学校保健安全法により、水疱がすべてかさぶたになるまでは、学校や保育園をお休みする必要があります。
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
おたふくかぜは、ムンプスウイルスが原因で、発熱と耳の前下部にある耳下腺の腫れを引き起こす感染症です。春から夏にかけて流行し、主に幼児に多く見られます。口を開けたり食事をしたりして唾液が出るときに、顎の下に痛みを感じることが特徴です。おたふくかぜは、生涯に1度しかかからない病気で、おたふくかぜワクチン(任意予防接種)で予防することができます。
(症状の経過)
おたふくかぜには簡単にできる検査はありませんが、発熱、頭痛、食欲不振などの症状が出てから約2日後に耳下腺が腫れ始めます。通常は片側の耳下腺が最初に腫れ、1〜2日以内に反対側の耳下腺も腫れることが多いです。まれに、無菌性髄膜炎、難聴、思春期以降では精巣炎、卵巣炎、乳腺炎を合併することがあります。
(対応方法)
少量でもよいので、こまめに糖分を含んだ水分を摂取させ、腫れによる痛みには鎮痛薬を使用しながらしっかり休養を取ることが大切です。
学校保健安全法では、耳下腺、顎下腺、または舌下腺の腫れが出てから5日が経過し、全身の状態が良好になるまでは、学校や保育園をお休みする必要があります。
伝染性紅斑(リンゴ病)
伝染性紅斑(リンゴ病)は、ヒトパルボウイルスB19が原因で、発熱や発疹などを引き起こす感染症です。冬から春にかけて流行し、主に5~15歳の学童に見られます。頬が真っ赤になることが特徴で、体幹や手足にレース模様のような発疹が現れることがありますが、発疹が出る頃には症状は軽快します。妊婦が感染するとまれに胎児に影響を及ぼすことがあるため、注意が必要です。この感染症は生涯に1度しかかからず、予防接種はありません。
(症状の経過)
最初に発熱、頭痛、喉の痛み、咳、目の充血、皮膚のかゆみ、筋肉痛などの症状が2~5日間続き、その後、頬や全身に発疹が出現します。まれに、日光、気温変化、運動、ストレスなどによって、発疹が再び現れることがあります。
(対応方法)
この病気には簡単にできる検査はありません。治療は主に症状を和らげることが中心です。少量でもよいのでこまめに糖分を含んだ水分を摂取し、筋肉痛や関節痛には鎮痛薬を、かゆみには抗ヒスタミン薬を使用しながら、しっかり休養を取ることが大切です。
伝染性紅斑は、学校保健安全法において出席停止の対象ではありません。全身の状態が良ければ、登校や登園は可能です。ただし、保育園や幼稚園の指示に従うようにしましょう。
麻疹(はしか)
麻疹は、麻疹ウイルスが原因で、二峰性の発熱(一度熱が下がり、再び高くなる)や鼻水、咳などの症状を引き起こす感染症です。免疫力が弱い赤ちゃんや高齢者がかかると、肺、耳、脳に後遺症が残ったり、場合によっては命に関わることもあります。麻疹は一生に1度しかかからない病気で、MRワクチン(定期予防接種)で予防が可能です。
また、予防接種が一般的でない国に行ったり、その国の人々と接する機会があると、麻疹に感染するリスクが高まるため、注意が必要です。
(症状の経過)
麻疹の初期には、発熱、目やに、くしゃみなどが現れ、口の中の粘膜に塩粒状の白い斑点(コプリック斑)が見られます。発疹は、顔から始まり、体全体に広がり、色素沈着を残すのが特徴です。発疹が出てから約2日後に解熱し、発疹は茶色に変わって徐々に消えていきます。
(対応方法)
簡易な検査はありませんが、必要に応じてPCR検査を保健所に依頼することがあります。
治療は主に症状を和らげるため、少量でもよいのでこまめに糖の入った水分を摂取し、解熱薬などを使用しながらしっかり休養をとることが大切です。
学校保健安全法では、解熱した後、3日が経過するまでは学校や保育園をお休みする必要があります。
風疹(3日はしか)
風疹は、風疹ウイルスによって引き起こされる感染症で、発熱、鼻水、咳、皮疹などの症状が同時に現れます。春から夏にかけて流行し、主に5~14歳の子どもに見られますが、妊婦が感染すると胎児に深刻な問題を引き起こす可能性があるため、特に注意が必要です。風疹は生涯に1度しかかからず、MRワクチン(定期予防接種)で予防が可能です。
予防接種は、子どもだけでなく、妊娠を計画している夫婦にも非常に重要です。
(症状の経過)
子どもの場合、微熱とともに耳の後ろや首のリンパ節が腫れることがあります。発疹は淡い斑状丘疹で、顔から全身に広がり、約3日で消えます。一般的に、大人は子どもよりも症状が強く、関節痛や睾丸痛などが現れることもあります。
(対応方法)
風疹の診断には簡易検査はありません。治療は主に症状を和らげることが中心です。少量でも良いので糖分を含んだ水分をこまめに摂取し、解熱薬などを使いながら十分に休養を取ることが大切です。
学校保健安全法では、発疹が消えるまで出席停止となります。