一般小児科
小児科・一般診療について
小児科は、新生児から乳幼児、小学生までのお子さまが抱える一般的な病気や成長に関するお悩みに対して、必要な治療やケアを行う診療科です。小さなお子さまは自分の症状を上手に伝えることが難しいため、保護者の方からお話を伺い、総合的に判断して治療を進めていくこともあります。
どんな些細なことでもご相談ください
当院では、発熱、咳、喉の痛み、鼻水や鼻づまり、腹痛、便秘、嘔吐、下痢、ひきつけ、夜尿症など、お子さまに多いさまざまな症状を幅広く診療しています。軽い症状の場合は、安静にすることで自然に治ることもありますが、症状が長引いたり悪化したりすることもあります。少しでも不安を感じたら、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
私たちは地域の「かかりつけ医」として、お子さまと保護者の方のお話を丁寧にお聞きし、わかりやすく説明することを大切にしています。診察の結果、さらに詳しい検査や処置、入院が必要な場合には、地域の病院や専門医へご紹介いたします。
診察をスムーズに進めるために
お子さまの症状や体調の変化を記録しておくと、診察がスムーズに進みます。以下のような点を記録していただけると、診断に大変役立ちます。
- 症状が出たタイミング(いつから、どんな時に始まったか)
- 思い当たる原因
- 症状の変化(時間が経つにつれて悪化したり、良くなったりしたか)
- 発熱・咳・鼻水の有無
- 排尿・排便の変化(回数や状態の変化)
- 食欲の有無(普段と比べてどのくらい食べられているか)
- 最近の食事内容
- 薬やアレルギーの有無
- これまでかかった病気や手術歴
- その他気になる点(普段と違い行動や様子)
診療の際にお持ちいただくもの
乳幼児健診を受ける際は、以下のものをご持参ください。
- 母子健康手帳
- 健康保険証
- 小児医療証
- お薬手帳(お持ちの場合)
- 診察券(お持ちの場合)
小児科の感染症について
乳幼児は免疫力が未発達で、感染症にかかりやすい時期です。子どもたちの間では大人とは異なる感染症が流行しやすく、特に保育園や幼稚園での集団生活が始まると、さまざまな感染症にかかるリスクが高まります。また、年齢によって免疫系や臓器が発達段階にあるため、同じ感染症でも年齢によって症状の経過や合併症のリスクが異なります。
当院では、お子さまの年齢を考慮した感染症の診療に力を入れています。
お子さまの感染症についてご心配やお悩みのある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
近年、出生前のお母さまに対するB群連鎖球菌スクリーニングや、肺炎球菌・インフルエンザ桿菌に対する予防接種の導入により、重篤な感染症の発症率が減少しています。しかし、生後90日未満の赤ちゃんはまだ免疫が十分ではなく、尿路感染症、菌血症、細菌性髄膜炎などの重篤な細菌感染症にかかるリスクが依然として高いため、特別な注意が必要です。生後90日未満のお子さまが発熱した場合、迅速に対応できるよう、尿検査、血液検査、髄液検査などが必要であれば、当院から連携病院へご紹介いたします。
急性気道感染症
急性気道感染症は、いわゆる「かぜ」にあたる病気です。急性気道感染症のほとんどはウイルス性(ライノウイルスなど)で、自然に回復します。しかし、抗菌薬が必要な細菌性の感染症を見逃さないことが大切です。抗菌薬の治療が必要となる主な病原体には、A群β溶連菌、百日咳、マイコプラズマがあります。
(症状の経過)
急性気道感染症では、鼻水、鼻づまり、咳、発熱、のどの痛みなどが約10日間続くことがあります。年齢や症状、診察結果に応じて、鼻炎、咽頭炎、クループ喉頭炎、気管支炎、細気管支炎、肺炎などの疾患が診断されます。
多くの場合、症状は自然に軽減しますが、以下のような場合には小児科を受診してください。
- 3か月未満のお子さまの38度以上の発熱
- 38度以上の発熱が4日以上続く
- 耳を痛がる、耳だれがある
- 咳や鼻水の症状が長引いている
- 半日以上、水分が全く取れない
- 不機嫌が続き、あやしても泣き止まない、眠れない
- 呼吸が苦しそう
(対応方法)
乳児や幼児の治療は、成人の治療とは異なります。成人では、抗ヒスタミン薬(鼻水)、消炎薬(のどの痛み)、咳止め薬(せき)、去痰薬(鼻づまり)などが単剤または組み合わせて使用されることが一般的です。しかし、小児ではこれらの薬の有効性が十分に証明されていない場合が多く、副作用が懸念されることもあります。
そのため、年齢や症状に応じて、お子さまの安全を第一に考えた薬を処方します。
急性咽頭炎
急性咽頭炎の代表的な原因菌の一つにA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)があります。そのほかにウイルス性の咽頭炎もあります。溶連菌は咽頭炎(発熱、のどの痛み)の他に、猩紅熱(発熱、やすりのようにざらざらした皮疹)を引き起こす場合があります。この感染症は冬から春、夏にかけて流行し、特に3歳から12歳のお子さまに多く見られます。3歳未満では稀です。
(症状の経過)
38度以上の高い発熱、頭痛、咽頭痛、頸部リンパ節の腫脹、扁桃の腫脹を認めます。ウイルス性と見分ける方法として、溶連菌では咳や鼻汁がないことが特徴で、迅速抗原検査でも診断できます。
(対応方法)
溶連菌による咽頭炎の場合、5~10日間の抗菌薬治療が必要です。ほとんどの方は治療開始後、翌日には解熱しますが、発熱が続く場合は他の原因が考えられます。たとえ症状が軽快しても、決められた期間の抗菌薬をしっかりと服用することが大切です。これは、2週間後に発症する可能性がある「急性リウマチ熱」(発熱、関節痛、発疹、心臓の炎症を伴う)という合併症を予防するためです。
また、まれに溶連菌感染後の「糸球体腎炎」を発症することがあります。1か月後に頭痛や顔のむくみ、尿が出にくいなどの症状が見られた場合は、すぐに受診してください。
クループ症候群
クループ症候群は、ウイルスによって喉頭と気管に炎症と腫れが生じる疾患です。主な原因となる病原体には、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、新型コロナウイルスなどがあります。特に気道が狭い3か月から5歳のお子さまに多く見られ、犬の吠えるような「犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)」と呼ばれる甲高い咳が特徴です。夜中の1~2時頃に呼吸が苦しくなり、目を覚ますことがあります。
(症状の経過)
クループ症候群は、まず風邪のような症状から始まり、その後犬吠様咳嗽や声がれ、ぜいぜいといった呼吸音が見られます。ほとんどの場合、翌日には甲高い咳が軽快しますが、咳が続く場合や悪化する場合は、異物誤嚥など感染症以外の原因を考える必要があります。
(対応方法)
お子さまが不安や興奮すると、狭い気道がさらに呼吸しにくくなるため、落ち着かせることが重要です。喉頭の腫れを和らげるために、ステロイドを内服したり、アドレナリンを吸入したりすることがありますが、呼吸を楽にするために、縦抱きでお子さまを抱いて落ち着かせることが最も効果的です。
また、水分を十分に与えたり、窓を開けて涼しい空気を吸わせたりすることで症状が和らぐこともあります。これらの方法で症状が改善しない場合や、息苦しさがひどくなる場合は、すぐに医師の診察を受けてください。
急性気管支炎・肺炎
急性気管支炎や5歳未満のお子さまの肺炎の原因となる病原体のほとんどはウイルスです。具体的には、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルスなどが挙げられます。一方、5歳以上のお子さまの肺炎の場合は、インフルエンザ菌、肺炎球菌、モラキセラ・カタラリス、百日咳菌、マイコプラズマ、クラミジアなどの病原体も考慮する必要があります。
(症状の経過)
主な症状としては、咳、呼吸が速い、呼吸が苦しい、唸っている、落ち着かない、眠れないなどがあります。特に3歳未満のお子さまでは、喘息のような呼吸音が認められ、呼吸障害が重症化することもあります。
(対応方法)
急性気管支炎・肺炎に対しては、原則として抗菌薬は必要ありません。ただし、発熱が5日以上持続したり、咳が10日以上続いたりした場合は、抗菌薬治療を検討します。
また、咳が2週間以上続く場合は「遷延性咳嗽」と呼ばれ、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、喘息、心因性の要因などが考慮されます。
急性細気管支炎
急性細気管支炎は、肺に空気を出し入れする小さな枝分かれした細気管支に感染し、腫れや粘液の増加により呼吸がしにくくなる疾患です。特に2歳未満のお子さまがかかることが多く、代表的な病原体はRSウイルスです。このほかに、パラインフルエンザウイルスやヒトメタニューモウイルスも関与しています。RSウイルスやヒトメタニューモウイルスは、迅速抗原検査で診断可能です。
(症状の経過)
最初は鼻汁、鼻閉、咳が見られますが、症状が悪化すると発熱、咳、喘鳴、呼吸障害が現れることがあります。通常、症状は発症から10〜14日間で自然に軽快しますが、発熱が5日以上続く場合は中耳炎や肺炎の合併を考慮する必要があります。
(対応方法)
少量でもこまめに糖分を含む水分を摂取し、解熱薬を使用しながら休養をとることが大切です。症状が悪化した場合には、酸素投与、輸液療法、呼吸器の補助のために入院が必要になることがあります。
急性胃腸炎
急性胃腸炎の原因となる病原体のほとんどはウイルスです。主なウイルスには、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、サポウイルス、アストロウイルスなどがあります。細菌による食中毒(カンピロバクター、病原性大腸菌、サルモネラ、エルシニア、ビブリオなど)の場合、嘔吐はあまり見られず、強い腹痛と下痢、時には血便が伴うことがあります。
(症状の経過)
初期には腸の動きが弱くなり、お腹が張ることが多いです。発症から24時間以内に頻繁な嘔吐が見られ、その後、軟便や水様便が続くことがあります。通常、数日で軽快しますが、ノロウイルスやロタウイルスによる場合は、嘔吐や下痢が長引くことがあります。一般的には熱は1日で収まりますが、細菌性の感染では高熱が48時間以上続くことがあります。
(対応方法)
低血糖や脱水を防ぐために、少量でもこまめに糖分を含む水分を摂取しながら休養をとることが重要です。嘔吐が強い場合、嘔吐が始まってから12時間経過して症状が落ち着いていれば、経口補水療法を始めます。具体的には、OS-1などの糖分やミネラルを含む経口補水液を5分おきに30ml程度繰り返し5〜6回摂取します。飲めるようであれば、1時間休憩し、同じことを繰り返します。嘔吐がなければ、食事を開始します。体重が10kg以下のお子様の場合、16時間以上糖分を摂取できなかった場合は低血糖の危険があり、点滴が必要になることがあります。
学校保健安全法で嘔吐や下痢の症状が軽快し、感染の恐れがなくなるまで出席停止です。
急性中耳炎
急性中耳炎は、風邪の後に多く発症します。鼻やのどの粘膜が腫れることで、鼻腔と耳をつなぐ耳管の機能が弱まり、中耳の圧力が変化します。その結果、浸出液と呼ばれる液体がたまり、そこに細菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌など)が増殖することがあります。特に2歳未満の乳幼児は、これらの細菌に対する抗体が低く、耳管が短いため、鼻の炎症が耳に伝わりやすく、中耳炎になりやすいと考えられています。
(症状の経過)
主な症状には耳痛、発熱、不機嫌があり、症状の重症度によって分類されます。耳鏡を使用して鼓膜の発赤、膨隆、耳漏(耳だれ)を評価します。
(対応方法)
急性中耳炎の半数以上は抗菌薬を使用せずに軽快しますが、48時間経過しても症状が続く場合には抗菌薬の使用を検討します。特に、以下の場合には抗菌薬治療が必要です:
- 耳漏がある場合
- 48時間以上続く耳痛や高熱
- 2歳未満で両側に中耳炎がある場合
抗菌薬治療を開始すると、多くの場合、翌日には症状が軽快しますが、再発を防ぐために5〜10日間の治療が必要です。また、2歳未満のお子さんについては、治療後2〜3か月で再診を行い、鼓膜の状態が改善していない場合(滲出性中耳炎)には、耳鼻科に紹介し、鼓膜切開を検討することがあります。
長引く咳
子どもは大人に比べて咳が出やすく、長引くこともよくあります。そのためは「咳が止まらない」「咳で夜寝られていない」「咳がつらそう」などの症状で医療機関を受診される方が多いといわれています。
(症状の経過)
小児では咳の原因を考える上で、症状の続く期間によって以下のように分類されます。
- 急性咳嗽(2週間未満)
- 遷延性咳嗽(2週間以上4週間未満)
- 慢性咳嗽(4週間以上)
咳の原因として最も多いのは「かぜ」です。かぜによる咳は3-4日目にピークを迎え、徐々に和らぎます。ただし、約25%の子どもは2週間以上、10%は3週間以上咳が続くことがあります。
(対応方法)
まずは、こまめに水分をとることが大切です。特に温かい飲み物が炎症を抑え、痰を出しやすくします。1歳以上のお子さんでは、小さじ1杯のはちみつを混ぜて、水分をとると咳を和らげる効果があります。2週間以上続く場合には、鼻炎、副鼻腔炎、気管支喘息等が原因である可能性が考えられます。この場合、抗ヒスタミン薬や気管支拡張薬を治療的診断として使用することがあります。4週間以上続く場合は細菌性気管支炎が疑われることがあり、その場合は抗生剤が有効です。
その他の薬剤として小児科でよく処方される去痰薬(痰切りの薬)は、咳止めの効果があると言われています。一方、鎮咳薬(咳止めの薬)の有効性は小児では証明されておらず、特に4歳未満では一部の鎮咳薬で副作用(嘔吐、腹痛、易刺激性など)に注意が必要で、慎重に使用する必要があります。
便秘
「便秘」とは、便が腸内に滞り、スムーズに排便できない状態を指します。1週間に排便が2回以下で、腹痛やお腹の張り、排便時の痛みや出血がある場合は、治療が必要と考えられます。
(症状の経過)
子どもが便秘になりやすい時期や原因として、以下の3つが知られています。
- 乳児期:母乳から人工乳への移行、あるいは離乳食の開始
- 幼児期:イレットトレーニング
- 学童期:学校が始まり、学校での排泄を避けたりすること
特に、2歳から4 歳のトイレットトレーニングの時期が、便秘の発症のピークとされています。この時期、腸内に便が溜まりやすくなると、直腸の感覚が鈍くなり、さらに排便時の痛みや出血といった体験が排便を避ける原因となり、便秘が悪化するという悪循環に陥ることがあります。
(対応方法)
便秘がある場合、まず浣腸で腸内にたまった便を取り除き、その後、便が出やすい状態を維持するために内服薬を使用します。また、排便日誌をつけて、排便の回数や服薬状況を記録することも有効です。治療の目標は、「便秘がない状態」を維持することです。